M&A業界動向

出版業界

出版業界出版販売金額は、1996年をピークとして以降減少傾向にあります。販売金額が1兆6,722億円となった2015年まで、11年間連続で減少を続けています。 中でも、月刊誌・週刊誌などの雑誌出版物の売り上げに大きな落ち込みが見られます。「本離れ」の原因として挙げられるように、インターネット、スマートフォンの普及が影響しているようです。
オーナー経営者の高齢化は出版業界でも見られ、後継者問題の解決、また従業員の雇用・取引先との関係を維持するためのM&Aによる事業承継が増えています。 また大手企業に比べて採用力の劣る中小企業は、後継者候補だけでなく、人手不足の問題も抱えており、タイミングさえ合えばM&Aによる売却を、と考えている経営者も少なくありません。
ただ、人手不足問題は程度の差こそあれ大手企業も抱えており、こちらは即戦力となる人材を確保するという点からも、M&Aに注目している出版社が多いようです。

スーパーマーケット業界

同業の大手資本による買収はもちろん、小売専門店・ドラッグストア・外食サービス企業など、異業種企業からの買収も増加傾向にあります。 日本チェーンストア協会が発表した販売統計によりますと、平成28年度の日本チェーンストア協会に加盟する会員企業の総販売額は、12兆9,797億円でした。これは2年ぶりの前年割れです。

人口の減少と少子高齢化の影響はもちろんですが、消費者が求めるスーパーマーケットの在り方にも変化があり、中・小規模店では、その多様化・多彩化への対応は困難であるのが現状です。 中でも鮮魚・青果・精肉の取引価格は上昇傾向が見られ、卸売業者に対する以前のようなバイイングパワーの維持は難しくなっています。
今後も、大手企業による活発なM&Aが続くと予想されます。

介護業界

幾度の介護報酬の改定、人材不足による環境競争の激化により、介護業界でのM&Aは活発化しています。同業種からの買収だけでなく、異業種大手企業からのM&Aによる買収が多く見られる点が、この業界の特徴です。
すでに介護予防の充実、在宅介護などの地域包括ケアを目指す方針が打ち出されており、今後の介護報酬の改定による影響もM&A市場に反映されると思われます。 超高齢化社会が迫っている国内では、業績が好調で高い評価を受ける企業が多く、近年はM&Aによる売却が積極的に行われています。

加えて、介護業界は慢性的な人材不足であり、その度合いは他業界と比べても圧倒的と言えます。採用力の強化、あるいは即戦力人材の確保のためM&Aは、今後も介護サービスを提供する企業の選択肢の一つとして存在感を増していきそうです。

LPガス業界

日本LPガス協会の報告によると、LPガスの需要は、都市ガスの普及などの影響を受けて1996年のピークを境に減少しています。 ただ一方では、LPガスがクリーン・エネルギーであること、インフラの整備が軽微で済むことなどから、緊急時への国民への貢献が期待されるエネルギーでもあります。

今後も一定以上の需要は維持されるという予想がつきます。 また、LPガス業界は現在圧倒的に売り手市場です。売り手企業優位の契約が締結されるケースも多く見られます。ただし、業界再編期はすでにピークを迎えつつありますので、早めの検討が望まれます。

ホテル・旅館業界

厚生労働省の報告によると、2015年3月末の旅館業の営業許可施設数は、78,898施設(前年度比 621施設減少)であり、そのうちホテル営業施設は9,879施設、旅館営業施設数は41,899施設、簡易宿所数は26,349施設とされています。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの効果、そしてもはや言わずと知れたインバウンドの増加により、2017年の訪日外国人観光客は、過去最高の2,869万人超となりました。政府は、2020年までに、この数を4,000万人にする目標を掲げており、この活況はしばらく続く見込みです。

こういったこともあり、大手企業のM&Aは活発化しています。また、借入金が重くのしかかり、経営再建の目処が立たない中・小規模ホテル・旅館が特に地方に多く見られます。2020年という節目の年を目の前にして、M&Aによる売却を行い大手企業の傘下に入る中・小規模ホテルも増加傾向にあります。

外食・飲食業界

外食・飲食業界外食・飲食産業の売上高は増加傾向にあります。 2017年の外食・飲食産業の市場規模は25兆4千億円です。ただ、上位10企業による市場占有率は10%を切っており、M&Aによってそこに食い込む余地のある業界とも言えるでしょう。
大手の外食チェーンの中には、事業の拡大だけでなく、新しい業態の開発のために、小規模企業をM&Aによって買収する企業も増えています。 また介護業界と同様、人材不足の改善・解消のためのM&Aも、依然として増加傾向にあります。

学習塾業界

多業界に比べて比較的参入しやすく、全国の10,000社以上によって構成されるこの業界は、今後同業種・他業種問わず、大手企業による寡占化が一気に進む可能性があります。
少子化によって生徒は減っており、デジタル教育の普及はまだしも、eラーニング等の普及をきっかけとしたIT産業からの新規参入に、既存の学習塾はいかに戦い、生き残っていくかを模索することになるでしょう。さらなる競争の激化は確実で、そこにM&Aによる大きな業界再編が起こる可能性は極めて高いと言えます。

エンジニア派遣業、技術者派遣業

エンジニア・技術者派遣業界は一兆円の市場規模を持ち、人材派遣市場全体の4分の1を占めていると言われています。人材不足に悩む企業は多く、その獲得競争が続いています。技術者の確保が、業界全体において最大の課題となっています。 またソフトウェア開発分野では、発注ロットの大規模化が進み、小規模の人材派遣企業はその対応に苦慮している現状があります。

企業の生き残りをかけた業界再建は活発になり、2018年に「特定労働派遣事業所」の猶予期間が終了したことのあおりを受け、特に中・小の派遣事業者は厳しい現状にさらされています。 経営者の高齢化も進み、後継者問題に頭を悩ませる企業も少なくありません。 こういった課題の解決方法として、M&Aを選択肢の一つに採用する企業が増えています。

ビルメンテナンス業界

ビルメンテナンス業では、多くの場合、ビルの清掃・保守・機器の運転を一括して請け負っています。 一方で従業員100名以下の小規模企業が業界全体の半数を占め、大手デベロッパーを親会社に持たない独立系管理会社もよく見られるようになりました。 建物を長く使うための提案、省エネ対応住宅の提案などのサービスが求められるようになり、今後も市場の拡大が予想されています。

メンテナンス技術者、清掃スタッフの獲得競争は激化の一方で、M&Aによる買収を希望する企業も増えています。つまりは良い条件での売却が可能であるということですので、売り手企業、買い手企業共に、早めの検討が必要です。業界再編のピークは今後、そう遠くない時期にピークを迎えると予測されます。

インターネット関連業界

「ネットサービス関連」と「通信販売関連」に大別されるインターネット関連業界ですが、どちらも事業拡大傾向が続いています。 すでにスマートフォンからのアクセス数が、パソコンからのアクセス数を上回っており、この業界における比重は大きく変化しました。
ただ業界全体の勢いは変わらず、今後は次世代技術への投資、革新的サービスの開発など、企業の成長に欠かせない要素の拡充・拡大のためのM&A市場の活発化が予想されています。

コールセンター業界

通信販売事業の好調、訪日外国人客の増加を背景とし、人材の確保とその人材の(多言語)能力が求められるようになっています。 訪日外国人客は今後も増加が見込まれています。また、2020年の東京オリンピック開催を見据え、自社の課題克服のためにM&Aを活用する企業が増えています。この動きは今後、ますます加速していくでしょう。

警備業界

価格競争、警備員の不足、警備員の高齢化の波が一気に押し寄せ、この業界は大きな転換期を迎えていると言えます。特に、若い労働力の確保が大きな課題です。 また、経営者自身も高齢化が進んでおり、従業員の確保、採用力の向上、事業承継問題を一度に解決する可能性を秘めたM&Aは、売り手・買い手の双方にとって魅力的であり、成約数は増加傾向にあります。
警備業務以外の業務(施設管理・精巣・設備工事)を含めて総合的な提案することは、同業他企業との差別化を図る意味で導入済・導入検討中の企業も多く、提案力と総合力の確保のための戦略的M&Aが今後はさらなる増加が見込まれています。

物流・運送業界

物流・運送業界物流・運送業界は、サービス競争の激化、ドライバーの不足、ドライバーの高齢化が大きな問題となっています。インターネット通信販売業界の急速な拡大などによるドライバーの労働環境の悪化は、社会的問題としても取り上げられました。
ヤマト運輸は、荷物量の抑制、配達時間帯の指定区分の見直しなど、宅配サービスそのものの見直しを余儀なくされました。同業他企業もこれに追随し、今後も大手企業を中心に業界の再編が続くと見られます。
若い従業員の割合が他業界と比べても低いにもかかわらず、今後も一定のサービスの供給が求められます。人材の確保、採用力の強化、またそこに事業承継問題も加わり、M&Aによる買収・売却は増加傾向にあります。

健康食品・サプリメント業界

一時衰退したと見られた健康食品・サプリメント業界が盛り返しています。24時間営業のスポーツジムが増え、「鍛えて手に入れる健康」が注目されていることも、この盛隆を後押ししているようです。 2017年のある調査では、健康食品・サプリメント業界の市場規模は8,000億円超と推定されています。
シニア層の健康意識の高まりが顕著でしたが、近年それが若者にも波及しており、将来的にも安定した需要が見込まれます。 大手メーカーが競争を激しくさせている中で、開発に関する技術力を持つ中堅メーカーにも大きな注目が集まっています。大手メーカーの事業拡大、技術力の向上、開発力の強化といった課題の解消のため、魅力のある企業は優位な条件でM&A契約を結ぶことが可能です。

内装工事・リフォーム業界

近年最もM&Aが活発に行われているのがこの業界です。 訪日外国人客が増加の一途を辿り、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控えた現在、内装の需要が急激に高まっています。 ただ一方で、2021年以降にはそれまでの需要からの減少が予想されます。
業界全体が好調である現在こそM&Aによる買収を進めるべきという動きと、高く評価される今こそ売却し経営の基盤を安定させるべきという動き、その両方が見られます。

どちらにせよ、2020年というタイミングで、業界の風向きが変わる可能性が高そうです。経営者は、中・長期的な視野を持ったM&Aの活用法を、早期に検討する必要があります。

ドラッグストア業界

ドラッグストアが同じ小売業であるコンビニに対して持つ優位性は、利益率の高い医薬品・化粧品を主要な収益源としているため、利益率の低い食料品や日用品を低価格で提供できることにあります。 また価格競争に強いスーパーマーケットに対しては、薬剤師といった専門知識を持つ人材を配置できること、参入障壁の高い化粧品をしっかりと確保していることなどで差別化に成功しています。

売上高の伸び率が鈍化し「成熟期」を迎えたかに見えたドラッグストア業界ですが、この数年の訪日外国人客の急増により、再び勢いを増しています。業界再編の動きはまだ続いており、今後もM&Aの活発化が進んでいくでしょう。

電気・通信工事業界

収益が公共工事と民間の設備投資によって構成されるため、景気の影響を受けやすいのがこの業界です。 2011年の東日本大震災からの復興、2020年には東京オリンピック・パラリンピック開催と、需要は高い水準で維持され、業界規模も拡大しています。

一方で、資材の高騰、技術労働者の不足といった問題も発生しています。特に人手不足に関しては、長時間労働、休日の少なさ、雇用環境の悪さ、といったイメージが先行して長く改善の兆しが見られません。若い労働者は足りず、高齢の労働者がなかなか引退できない現状もあります。 人手不足の解消、採用力の強化、事業承継問題の解決の方法の一つとして、M&Aが今後注目を集めそうです。

建設業界

東日本大震災からの復興需要、東京オリンピック・パラリンピックの需要、アベノミクス効果で投資が拡大し、建設業界は好調です。
大手企業が潤う一方で、中小企業の恩恵はそう多くありません。資材の高騰、労働者の減少といった問題の影響も受けています。 経験豊富な技術者・技能者の確保、人手不足の解消、事業承継問題の解決を視野に入れたM&Aが増えつつあります。

広告業界

2018年の株式会社電通の発表によりますと、2017年の日本の総広告費は6兆3,907億円(前年比101.6%)で、6年続けてのプラス成長を見せました。 世界経済の回復と企業収益の拡大が進み、特にインターネット広告の好調が目立ちます。インターネット広告は、現在の成長速度を維持していくと2020年にはテレビメディア広告を上回る見通しです。
またその内訳として、スマートフォン広告費が上昇を続けているのに対し、パソコン広告費は下降傾向にあり、インターネット広告費全体に占める割合も、スマートフォンがパソコンを上回っています。 国内最大手の電通がインターネット広告代理店をグループ化したように、大手の広告代理店を中心とした業界再編が進んでいます。

製造派遣業界

人材派遣業界は、労働集約型業務を中心とした「事務・製造派遣」と、高い専門性が求められる「技術者派遣」に分けられます。 事務・製造派遣は、登録者数と派遣先の多さが評価基準の一つとなりますので、M&Aが積極的に行われ、大手企業への集約が進んでいます。

そして2015年施行の改正労働者派遣法により、旧一般労働者(事務・製造派遣)派遣事業者は、有期社員の派遣可能期限に至るまでに、無期雇用化等の対応をすることが必要になりました。事務・製造派遣の労働者への教育(キャリア形成支援)体制の整備・運営により、コストの上昇が見込まれます。

ソフトウエア開発業界(システム開発・運用)

事務処理やデータ集計等、特定の目的を達成するためのソフトウェアの企画・設計・開発・運用・保守を行うのがこの業界の事業者です。 各業界のITへの投資額は増加の一途を辿り、それに伴いITエンジニア・技術者の不足が続いています。ITエンジニア・技術者の確保が最も重要な課題となっている企業も少なくありません。

また、大手企業から90年代に独立して中小企業を設立した経営者が、後継者問題に頭を悩ませているケースも近年よく見られます。ITエンジニア・技術者の不足や事業承継問題に直面した多くの経営者が、M&Aをその解決策の一つとして求めています。

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